猫伝染性腹膜炎(FIP)とは
FIPと呼ばれている猫伝染性腹膜炎とは、主に1歳未満の猫に好発するウイルス性感染症です。
このウイルスは猫腸コロナウイルスが変異し、強毒化したものと言えます。
猫腸コロナウイルス自体はありふれていて、野良猫、家猫問わず感染している可能性が高いものの、症状は弱く軽い下痢や嘔吐などで、無症状であることも多いです。
単独飼育に比べ、多頭飼育環境において多く発生するとされています。
症状は致命的で、効果的な治療法もなく、予後も非常に悪いという、猫にとっても猫に関わる人間にとっても、非常に恐ろしい病気です。
症状
FIPの症状は多岐にわたり、ウェットタイプとドライタイプに分けられますが、混合タイプのこともあります。
どのタイプであっても元気消失、食欲減退、体重減少、発熱、睡眠過多があり、これらの症状が続く場合には、FIPを疑う必要があります。
ウェットタイプの症状
FIPの60%以上がウェットタイプです。
特徴的な症状として、腹膜や胸膜、または血管が炎症を起こし、浸出液が溜まる腹水や胸水があります。この溜まった水が臓器を圧迫し、呼吸困難に陥ることがあります。
進行が早いので速やかに対応することが求められます。
ウェットタイプでは腹水や胸水を検査することによって、診断を確定させることができます。
ドライタイプの症状
ドライタイプの特徴的な症状としては、臓器に炎症を起こし、肉芽を発生させ機能を低下させます。
脳に炎症が起これば、けいれん発作や眼振などが起こります。
また眼に症状が現れることもあり、ブドウ膜炎や左右の瞳孔の大きさが違う瞳孔不同などが見られます。
神経症状が起こると、その後回復しても後遺症がでる場合があります。
ドライタイプでは確定診断をつけることは難しいので、症状を総合的に見て診断することになるでしょう。
ねころび荘にもドライタイプのFIPを発症し、回復した猫がいますので以下に参考リンクを貼っておきます。
→ドルのFIPの経過
→YouTubeで公開している闘病記録
治療
残念ながらFIPの治療に確立した方法はなく、症状を緩和する対症療法がメインとなっています。
ねころび荘のFIPを発症した猫が回復したのは、国内では未承認のMUTIANというものを投与した結果なのですが、これは非常に高価であり、猫や環境への将来的な影響は未知なものです。
国内でMUTIANを処方している動物病院は少ないながらもありますので、以下に紹介しておきます。
→MUTIAN 協力動物病院
また、お近くに協力病院がない場合は個人輸入する方法もあります。
原因
FIPを発症する原因は、害の少ない腸コロナウイルスが突然変異を起こし、猫伝染性腹膜炎ウイルスとなることです。
突然変異が起こる詳しい原因は解明されていませんが、ストレスなどによる免疫力の低下がきっかけと推測されています。引っ越しやワクチン、避妊去勢手術など、避けられないストレスもあるので、完全に原因を排除することは困難です。
腸コロナウイルスに罹らなけば変異することもないので、発症することもありません。
そのためには完全に単独飼育にするか、感染していない仔猫のうちに大人猫から離して生活させる必要があります。飼い主が外から持ち込むこともあるので、それでも感染は起こる可能性はあります。
実際にFIPの猫を看護して感じたこと
治療を始めるまでは、毎日確実に死へ向かっているのが見て取れました。好みのフードを食べる気力もなく、体温も下がり始めていました。体温低下は致命的になることがあるので、すぐに保温しなければいけません。湯たんぽやペット用のヒーターなどを使いしっかり温めました。熱くなりすぎないように気をつけるのも忘れないようにしました。
治療開始から1週間は皮下注射でMUTIANを投与し、その後は経口投与に切り替えました。
ドルの場合、MUTIAN投与から1週間で症状は劇的に改善しました。その1週間で1番大変だったのは給餌です。
自ら食べる意思がなく、強制給餌しなければいけませんでした。
強制給餌で食べさせたものは少量でカロリーが取れるもの、もしくは給餌しやすいものを選びました。
具体的な商品名はチューブダイエット、JPスタイル幼猫用離乳食、エナジーチュールです。これらを猫の上顎に塗るか、シリンジで少しずつ口の中に流し込むことで飲み込んでもらいます。
給餌と同時に10ml程度水分補給もしました。体温より少し低めのお湯をシリンジで少しずつ流し込みます。仰向けではやらないように注意したほうがいいと思います。
給餌は1日の目標摂取カロリーを決めて、少量で頻回を基本に上げました。ドルの場合は1~2時間毎に給餌していました。まずは1日100kcal(10kcal×10回)くらいを目標にして、体調を見て増やしていきました。
強制給餌を素直に受け入れてくれる猫は少ないと思います。体調が悪いのに無理強いするのは罪悪感も沸いてきます。イヤイヤする姿に、私も何度か心折れそうになりました。
猫は強制給餌が何を意味するのかわかりません。でも私達はわかっています。強制給餌は命をつなぐための行為です。そしてそれができるのは私達人間だけです。
自分から食べるようになった時には涙が出ましたよ。頑張りましょうね。
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